7月2日の午前3時。
 『皆様、おはようございます。本船は今からパナマ運河に…』
 独特すぎる抑揚の声での放送に飛び起きる。
 この声の主は普段はレストランを担当している方で、メニューなどを印刷に来るときに私も何度かお目にかかっていた。
 新聞局の後ろにある印刷機は本当に人を見る機械で、お気に入りの人でなければたちまちストライキ(紙詰まり)を起こす。
 その処置をしながら何度か話をしたのだが、そのときはこんな特殊な話し方ではなかった。
 しかし、四十何回クルーズに乗船した方の話では、その頃からこういう話し方だったとのことで、もしかしたらマイクを持つと口調が変わるタイプなのかもしれない。