オセアニック号の次の目的地は、ポーランドのグダニスク。
 デンマークのコペンハーゲンから、船は一度北に向かい、コペンハーゲンのあるシェラン島を回りこむような感じで南下していく。
 船員さんによれば、シェラン島の東部にあるエーレスンド海峡は水深が浅く、オセアニック号では浮力が足りなくなって進みにくいのだという。
 エーレスンド海峡を行ければ時間短縮が出来るのだそうだが、そうはいかないので大ベルト海峡を静々と南下していくことになる。 

 局長が無事にアウシュビッツツアーに旅立ったのはいいが、残された新聞局員は編集会議、3日の新聞発行、4日以降の新聞製作とやらねばならないことが満載である。
 しかも悪いことに、アウシュビッツツアーに局長と同じくらい肝心要の人物が、同じツアーに行ってしまっていた。
 その方は、いつも印刷を手伝ってくれている方で、ピースボートセンターにある、どう控えめに表現しても最新型とも最近型ともいえないがオセアニック号よりは若かろうという印刷機の性格を熟知している方だった。
 この人にかかれば、船員さんやピースボートのスタッフですら扱いに困る印刷機は、とても機嫌よく仕事をしてくれるのである。
 しかし、印刷の人もいなければ局長もいない。
 目の前を黒猫がダース単位で通過したような心持ちの中、6月2日は始まった。