ル・アーブルはフランス北西部にある都市。
 『どくとるマンボウ航海記』にも出ているが、北杜夫氏はすぐにパリの友人T(恐らく辻邦生氏)に会いに行ってしまい、この街の描写は少ない。
 この港町の名を知らない人は多く、ヒドイのになると「有名な美術館がある町なんですよね?」とのたまう輩もいる。どうも、パリのルーブル美術館とカンチガイしているらしい。

 私は『どくとるマンボウ航海記』のおかげでこの港を知っていたが、あの作品に出会わなければ私も詳しくはこの町を知らなかっただろう。
 この町で見たい場所は北杜夫氏がパリに向かったル・アーブル駅と、作中の描写であった「水門」である。
 潮位の差が激しいル・アーブルは、パナマ運河式に閘門を開け、船は奥に進んでいくという。

 朝、船が到着すると勇んでデッキに出てみたが、水門をくぐってきたらしき形跡はない。
 ただ、海が近くに見えるのみである。
 今は昔、もう、水門なんて使っていないのかもしれない…。