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サイレント・チャリティーオークション [地球一周の船旅]

 最後の出航日の翌日は、リフレッシュデーとなった。相変わらず、新聞とブッカーは休みではない。
 明日に惑星の会合イベントを控え、私はなんとなくデッキに出ては空を眺める。
IMG_4153.jpg
 空青く波静かで快晴。
 天気は私の責任ではないのだが、記事を書いたのは私であり、惑星の会合のために2コマを一ヶ月ほど前から局長に予約していたのも私である。
 もし記事が入ったら駄目だよ?とのことだったが、実際には4コマ開いてしまい、急遽クイズ問題などが挿入された。
 それはさておき。
 これから船はハワイの少し上を通る予定で、これからは暑くなることが予想される。
 私は温熱下着やセーター、厚手のカーディガン類、上着、ひざ掛けなどをきちんと畳んで仕舞い込んだ。

 さて、船内はリフレッシュデーだが、ピースボート主催で小さな催し物が開かれていた。
 ひとつは映画だが、もうひとつはサイレント・オークションというものだ。
 これは普通のオークションと違って、ひとところに集まって競り合うのではなく、オークションの物品が集められてその前に紙が貼られ、入札者はその紙に名前と値段を記していく。
 最後に一番高い金額を入札していた人が勝ちで、その物品を競り落とせるというシステムだ。
 前にやったオークションと同じく、集まったお金はパレスチナ難民支援の『サナアプロジェクト』と、イラク難民支援機構の『カリタス』に贈られる。
 新聞を作る合間に見てみると、イラク人アーティストの作品やギリシャのオーガニック石けんなどにはどんどん書き込みがあるのに、一個だけ書き込みが無いミソッカスな品物があった。
 それは北欧のとある団体が、自然保護のために作成している作品のひとつで、木の皮をつかった小物入れのような、そうでないような、なんとも微妙な作品だった。北欧テイストか、北欧デザインの一種かと思ったが、どうにも前衛的すぎるデザインなのか、よくわからない。あまりに微妙な佇まいというか、ポジションというか、なんだかそんなモノだからか、一人の入札者もない。
 木の皮だから、底が丸い。小物入れにしては不安定である。だから、小物入れと思い込んでいるのは私の先入観であって、もしかしたら小物入れでは無いのかもしれない。
 こういう仲間外れ君を見ると無性に気になる私は、ちょうど隣にいたGETのまとめ役の先生に聞いてみた。
「これ、何でしょうね?誰も入札していませんが」
「小物入れじゃないかなぁ?そのうち、誰か入札するでしょう」
 やはり小物入れか。
 私は納得し、呼び水のつもりで名前と最低入札額を書き込んでおいた。

 ところが、新聞を出し終わり、ひょいとオークション会場をのぞいてみると、ミソッカスな小物入れ君は私が落札していた。つまり、私以外に誰も入札者がいなかったのである。

 商品は後日受け渡しとなり、ピースボートセンターで引き渡してもらった。
 800円で入札したはずだが1000円に値上がっており、しかし担当のプログラムディレクター氏は果てしなく疲れた顔をしていて、私は寄付だと割り切って千円支払った。
 小物入れ君を受け取り、私は新聞局のブースに戻って、そこにいる新聞とブッカーのメンバーにそれを見せて聞いてみた。
「これ、何に見える?」
「…えーと」
「…さぁ?」
「……小物入れ?」
 やはり小物入れか。
 私は納得し、船上で小物入れとして使っていた。
 家に持ち帰ったあとも、散々「何コレ?」と聞かれた小物入れ君は、やはり小物入れとして今も活躍している。

 そういえば、写真を撮った気もしたが、この小物入れ君の写真は結局見つからなかった。
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