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悠久の摂氏50度~エジプト・ポートサイド2日目~ [寄港地]

 ポートサイドでは、ピラミッドと博物館見学のコースをとっていた。集合時間は午前5時。
 支度は前日にしておいたが、それでも寝ぼけていたせいか、帽子を忘れていってしまったのはまずかった。せめてカバンの中に入れておくべきだった。しかも気がついたのはカイロについてからだった。

 バスは自分で乗る号車を選べたので、GETのコーディネイターの先生がツアーリーダーをやっているバスに乗り込んだ。この判断が後で良い結果となってかえってくる。

 バスに乗り込んでもまだ外は闇。
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 停泊中のオセアニック号の照明が、いつもより華やかに見える。
 バス内で朝食が配られた。箱にパンなどが入っている。アルミホイルに包まれた細長いものがあったので、バナナかと思ってあけたらキュウリが丸ごと一本入っていた。
 キュウリ一本などと馬鹿にしてはならない。キュウリの冷却効果はかなりのものなのだ。

 閑話休題。

 エジプトの首都カイロへは、コンボイを組んで約3時間。
 サファガの時と同じく、前後をツーリストポリスの車が挟み、各車両にツーリストポリスが乗り込む。
 エジプトのハイウェイは日本の高速道路と違ってのんびりしたものである。バスの前をサトウキビらしき植物を大量に積んだトラックが走ったりしている。
 スエズ運河側には大きな貨物船が走るのが見える。反対側はサイロのような形のハト小屋がいくつも見える。
 ツーリストポリスなのか普通の警察なのか、車両(パトカー?)がオーバーヒートしたらしく、詰め所らしき建物の前でボンネットをあけて中を覗き込んだりしている。
 
 長いバス移動で車窓から見るようなものがないときは、寝てしまうに限る。
 出航の前にピースボートのスタッフから聞いたのだが、このような長いバス行程で途中トイレがないことを注意しているにもかかわらず、ビールなぞを呑んで「トイレに行きたい」と騒ぐ客が必ずいるとのこと。
 しかし、幸いなことに私が乗るバスにはそういう人はいなかったようだ。
 全体ではわからないが、一応そういった噂も聞かなかった。

 最初に行ったのは、カイロのエジプト考古学博物館。
 ここではカメラの持込がとても厳しく、手にして入ろうとすると入り口のゲートで預かる(平たく言うと、一時没収)ことになる。カメラ付き携帯電話も同様である。
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 中庭で写真が撮れるらしいが、やはり受付の通過が面倒とのこと。
 建物の外観はバスから撮ることになる。

 すでにじっとりと蒸し暑く、砂埃まじりの空気が息苦しく感じる。
 余談だが、エジプトは漢字にすると「埃及」となる。

 博物館内では、ガイドさんの解説をレシーバーで受信して聞くことになる。感度が良好すぎて、時折、他のグループの解説が聞こえてきたりもする。

 内部を一渡り、解説を聞きながら回る。
 かの有名なツタンカーメンの黄金のマスクや棺は、特別な部屋に展示されている。この部屋だけが冷房がよく効いていた。よほど私には霊感や神秘を感じるココロがないのか、黄金のマスクからは何の妖気も感じなかった。ただ、細工の見事さは他の副葬品や棺共々見事なものだった。
 機械の大量生産では再現できぬ、古代の神秘が確かにあった。
 金を払えばミイラ室に入れるとのことだったが、私はさほど信心深くないとはいえ、死したものを尊ぶ気持ちくらいはある。いつか再生の時を信じて身体を保存したとはいえ、見世物になっている姿は、見るに忍びない。
 平たく言えば木乃伊たるものに怖気づいたわけだが、それでも無料で見られる動物のミイラは見てきた。
 古代の王たちのペットととして死後も供をすべく、ミイラとなった犬や猫。供物として捧げられたワニや牛のミイラ。供物はともかく、犬猫たちは死後共にいるはずの主たちと別れさせられてガラス箱に収められ、やや寂しげにも見えた。

 そろそろ空いているかとトイレに行って出てくると、知り合いと会う。
 チケットを無くして入れなくなり、出てきた人から再入場チケットを譲られてようやく入れたという。
 ツタンカーメンのマスクが見たいとのことで、案内。互いに漫画の「ONE PIECE」好きなので、アラバスタ編の話も交えつつの鑑賞は、中々面白かった。

 カイロの主要道路は車でいっぱいである。
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 バスが乗降口を全開にしたまま走り、バンが後部のドアを全開にしたまま走っていく。

 途中で必ず土産物屋に寄る。
 ツアーに同行する現地ガイドにもノルマがあるようで、これを買う場合はこのチケットに記入して買ってくれなどと言われることもある。良く見れば、チケットの裏にはコース名とバス番号が書かれている。
 こういった土産物屋は総じて値段が露天より高めで、しかもマケない。
 それでも後ろで憤然たる叫びが聞こえてきた。「まぁ!船で4ドルで買ったものが、こっちじゃ1ドルじゃないの!」(アラブの商人参照)
 だからあれほどジャパングレイスが注意していたというのに。日本人が多い船で日本語がわからぬことは、かような不利益をこうむることになるらしい。

 昼食はおなじみのエジプト料理バイキング。
 ノンアルコールビールがあるとのことで、飲んでみたかったが無いとのこと。ツアーリーダーとガイドさんが頑張ったら、1本だけあると持ってきたがぬるい。しかも最初3ドルだったものが、最後のだから5ドルにすると言ってくる。
 怒ったのは私ではなく、ツアーリーダーの英語コーディネイターと現地ガイドさん。二人のおかげで、私は巻き上げられかけた差額2ドルを取り返すことが出来た。
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 渦中のノンアルコールビールに罪は無いが、多少は苦い味がしたのは否めない。

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 エジプトの首都カイロと、ピラミッドのあるギザとはナイル川を挟んで隣同士である。
 レストランの窓からは、ピラミッドが遠く砂煙にかすんで見えた。

 いよいよ、ピラミッドである。
 バスから出る前に、ガイドさんがにこやかに話す。「今、外は50度です^^」
 うへぇ@@;

 外へ出ると世界が白い。
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 砂だけの大地はこれでもかと乾ききり、太陽の熱をほぼ全て大気中に反射しているかのようである。
 目の前にあるピラミッドも、単なる石の巨大オーブンにしか見えない。近寄ると余計に熱く感じる。乾いた暑さが、神秘性を砂漠の向こうに吹き飛ばしたような感じだ。
 見上げてみたが、なるほど、ピラミッドは遠くから眺めるものだというのがはっきりわかるほど、表面はでこぼこである。昔は化粧石が表面を覆い、見事な四角錐の建造物だったのだろう。
 登れる場所があったので行ってみたが、積まれた石の一つ一つはとんでもなく大きい。これを作り上げた古代の人の情熱はすごいが、やがて王墓が王家の谷に推移していった経過もまたわかる気がする。
 
 ピラミッド前に立っていたツーリストポリス込みで写真を撮ろうとしたが、警官や軍人を勝手に撮ってはいけないとの注意があった気がして、撮ってもよいかと聞いてみたが、照れたように「No・・・」といわれてしまった。

 その後三大ピラミッドが見える場所に案内されたが、ここは物売りがかなり喧しい。
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 ガイドさんがラクダに乗りたい人を集めてまとめて交渉するとのことで、ついていった。一人2ドルだという。
 ラクダは立ったり座ったりするだけのためにここにいるようで、毛ははげてボロボロで、ひざや足もすりむけている。その点、まだペトラのラクダの方が良い生活をしているようにも思えた。
 しかし、私も乗った一人なので、あまり偉そうなことは言えぬ。

 ちなみに、後々聞いた話だが、ガイドさんを通さずにラクダに乗った人の中には18ドル巻き上げられた人もいる。
 ラクダは立つとかなり視点が高くなる。
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 飛び降りるのはほぼ不可能だし、歩き出せば馬よりも激しく揺れる。高さもあいまってかなりの恐怖だ。
 つまり、ラクダの御者は安価で乗せて、ラクダから下ろす時に高値を要求するのである。旅行者は注意しなければならないポイントだ。旅行会社がお膳立てしてくれるなら、それに乗ったほうがいい。個人で乗るのはぼったくられるだけだと思ったほうが良いだろう。

 かなり余談だが、アガサ・クリスティの名探偵ポワロの短編に、エジプト王の墳墓の事件(原題:Adventure of the Egyptian Tomb)というものがある。
 この中でポワロがラクダに乗る描写がある。ポワロは乗り物に弱かったから、特にこたえたのかもしれないが、うめいたり愚痴ったりした挙句にありとあらゆる聖人に祈りを捧げて、最後にはロバに乗り換える始末。
 私はキリスト教徒ではなかったので、ポワロのように聖人に祈りこそ捧げなかったものの、立ったり座ったりに疲れたラクダが歩き出した時には悲鳴くらい上げたかも知れぬ。
 事ほど左様に、ラクダは簡単な乗り物ではないのである。

 ラクダ…もとい、三大ピラミッドを眺めたあとは、スフィンクスを見に行く。
 一時期、スフィンクスの目線の先にはケンタッキーフライドチキンがあるとの話が話題になったが、その場所は今工事中らしく、壁で仕切られてよく見えない。
 大昔に侍が登ったスフィンクスも、今は遠くから眺めるのみだ。
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 ここも神殿らしき建物の中を進んでいくのだが、そこここに物売りがいる。
 一番近くで見たスフィンクスの横顔は、思ったよりも美男子(?)だった。
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 鼻が欠けているのはもうしょうがない。しょうがないと思えるほどの暑さと乾燥が、ここにはある。

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 神殿を抜けて戻ってくると、ショーか何かをやっているらしく、椅子がたくさん置かれた広場もあった。
 近くにはコーラなどを売る店がある。

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 遠くから見たスフィンクスとピラミッドのお決まりの写真も撮ってみる。
 しかし、これ一枚写すのに時間がかかった。おかしなことに、写真が斜めになるのである。
 この時点で異変に気づくべきだったのだろうが、自分がしたことはライトコーラをもう一本飲んだことくらいだった。

 ようやくの思いでバスに戻ったが、そのまま5分~10分ほど意識不明だったらしい。
 気が付くと出発していてガイドさんも降りていて、バスはハイウェイをポートサイドに向けて走っていた。
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 このクルーズ二度目の完全な熱中症だが、こっちは少し危なかったようだ…。
 意識戻って良かった(;´▽`A``
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