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手紙の帰還率 [船上コラム・我思ふ]

 ベネズエラのあたりで新聞局員の一人がプンプン怒っていて、何でも両親に手紙を出すように言われたらしい。
「ほぼ毎日メール送っているのに!なんで今頃手紙?手紙が付く前に自分が横浜に届く!」
 もっともなご意見だが、手紙というのはメールとは違い、不思議な趣を読む人に与えていると感じる。
 ご両親は自分の子どもの字が懐かしくなっただけなのだろう。

 船には自分がとった写真をハガキにする機械があったが、手紙部分は自分でシールを貼らないといけない。
 生来不器用な私は、大概しわ付きのハガキと化していたので、後半では寄港地で絵葉書を買っていた。
 もっとも、寄港地の絵葉書もペンで書くには適さないような加工がしてしまってあるものや、どこに住所や本文を書いて良いのかわからないハガキもあった。

 さて、私も筆まめでは無い以上、寄港地ごとに手紙を出していたわけではない。
 事前に手紙が届きにくい地域というのを聞いていて、もっとも悪評高かったのはエジプトだった。
 誰に聞いてもエジプトから無事に手紙が戻った人はおらず、私はエジプトから手紙を出すことは船に乗る前に諦めた。
 次に悪評高かったのはリビアだが、今航海では寄航しないし、かの国の情勢を鑑みると、今後寄航できるかどうか怪しい。
 私はアモイ、シンガポール、アカバ、ナポリ、ア・コルーニャ、ル・アーブル、グダンスク、ベルゲン、モンテゴベイ、クリストバル、エンセナーダから手紙を出したが、このうちグダンスク、エンセナーダ便が届かなかった。
 もっとも家に当てたものしかわからず、友人には「出した手紙届いた?」などとても聞けぬ。
 ヨルダンのアカバは届かないかもと思ったが、なんとか無事にたどり着いた。
 皆の意見でもっとも届きにくそうとされたのは、エジプト以外ではパナマだった。
 やめておけ切手代がムダだと言われながらも投函した私の手紙は、なんのことなく実家に届いた。
 やはりパナマは頑張っているようである。
 
 逆に、船に向けて手紙を届けさせるのは、実は非常に労力がいる。
 船が横浜港を離れたあとに投函するなら、最後の寄港地に宛てたほうが良い。
 できれば船に手紙を出すならメールにしたほうがいいと思うほど、難しい。緊急なら電話をかけねばならないが、先にメールを出す旨を伝えておけば、船に乗っている間適当にメールサイトを開いて見ることもできる。ただ、船内のネット料金は極めて高額なため、頻繁なやり取りは金銭的負担になることを覚悟しないといけない。

 船が寄港地を離れたあとに手紙が着くのは寂しいし、なんだか虚しい。
 すれ違い防止のためにも「船へはメール、船からは手紙(メールでもいいのだが)」を推奨したい。

 ただ、旅先からの手紙を楽しみにするのは家族だけでないようで、私は知らなかったが、たまたまその時期病床にあった友人の一人は、私の手紙が励みになったと帰国後に葉書をくれた。
 病床だと知っていたら、あんなミミズのダンスのような字は送らなかったのに。もう少し頑張ったのに。
 喜んでくれたのは嬉しいのだが、字については未だに後悔している。
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